異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「和よ」
「はい」
皇帝陛下からお声がかかって、頭を軽く下げる。ゆったりとした空気と声音は緊張感とは無縁で、まさかこれから戦いが始まるなんて信じられないほど。
「皇后に会いなさい」
「……は?」
唐突な提案に、非礼に当たると思いながらも顔を上げて皇帝陛下を見た。
だって、今までの流れから言えば、アイカさんをどうにかするという話になっていたはず。それなのに、ちらっとも出てこなかった皇后陛下に会うというのはなぜ?
「畏れながら申しあげます。皇后陛下にわたしがお会いする理由とは?」
「アイカに関わりがあるからですよ」
答えたのは皇帝陛下ではなくハルバード公爵で。彼は淡々と必要な情報を話す。
「皇后陛下は後宮に上がる前……恋人だった男がいました」