異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「ナゴム、ダイジョブ?」


ハッと我にかえると、ロゼッタさんが心配そうに顔を覗き込んでる。


(いけない……心配かけちゃ! あたしは……出来ることなんてないから、せめて迷惑かけないようにしなきゃ)


巫女とあがめられたところで、本当に何一つできやしない。自分の身を守ることだって……そんなあたしができることは、せめて足手まといにならないこと。よけいな手間をかけさせたり、心配をさせないこと。


役立たずなら、せめてそれだけはしっかり守りたい。


「だ、大丈夫! ちょっとお腹が空いただけだから。ほら、フルーツとケーキが来たよ! 食べちゃお」


あたしはわざと明るい声を出し、いただきます! と手を合わせて勢いよく果物にかぶりつく。


「ナゴム、イソグヨクナイヨ」
「あ、ごめんごめん! 果汁飛んじゃったか~あはは!」


からからと笑っていると、キキさんのそばに一人の男性がやって来てなにかを話してる。たぶん、セイレスティア語だろう。あたしには全然わかんない。


きっと、恋人なんだろう。彼を見るキキさんは、微かに頬を染めて全面的な信頼を寄せてるのが解る。相当な整った顔だちの彼は、背が高くて無駄のない流れるような仕草。品があるから、きっといいところのお坊ちゃんだろう。


(いいな……みんな大切な人がいてくれて)


日本に帰ったところで、芹菜以外の友達も家族も恋人もいないあたし。こちらの世界でも役立たず。


……あたしって、いる意味があるのかな? 涙を拭いうつむきながら食べた果物は、ほんの少しだけしょっぱかった。


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