異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
とすると。
アイカさんの実の母親は……皇后陛下?
そして、ライネス皇子はアイカさんの異父弟ということ?
それで、ライネス皇子がわざわざあたしに帰還の話を持ってきたと言うならば辻褄が合う。
彼は既に全てを知っていた。だから、きょうだいが争って欲しくはなかったんだ。
バルドがアイカさんと結ばれなかったのも納得がいく。義理とは言えきょうだいになるなら……。
それらを理解したあたしだけど、さすがに腹心とはいえ他の臣下が居る前で口にするのは憚られた。ここが完全にプライベートな部屋であるならまだしも、今は公的な立場でここにいる。
だから、軽々しく考えたことを言葉にはできない。
「わらわも、皇后陛下にはずいぶん遊んで頂いたからの」
アスカ妃はふふふ、と唇の端を上げる。妖艶とも言える笑みに、ぞくりと背中に冷たいものを感じた。
「何やら、戦を始めたのはわらわのわがままだとかな。怨嗟の声がようく聞こえてくる。宮廷を牛耳り皇帝陛下を堕落させた張本人だとか。
そういえば、耳は尖り角が生えた化け物という話もあったか」
手酷い言われようなのに、アスカ妃はずいぶんと楽しそうに話す。そうじゃろう? と念を押すように問いかけられましても。義母になる皇妃にそんな大それたことを答えられるはずもな……くもない。
「はい。正直に申しあげますと、バルドからそう伺っておりました。すっかり変わられてしまったのだと」
相手がアスカ妃だからこそ、ばか正直にお答えしておきました。