異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「わははは!」
急にばか笑いが謁見室に響き渡る。腹を抱えた皇帝陛下が、ばんばんと玉座を叩きながら口を開いた。
「アスカ、おまえの演技力も大したものらしい。周囲はすっかり騙されてくれたようだ」
「ふふふ。わらわも幼い頃は本気で演者に憧れておったからの。他者を演じることなど容易いもの」
アスカ妃までもが満面の笑顔で、信じられないことをのたまうてますが。
「あの……演技って一体」
「変わったことが大好きなバカが二匹、周囲を欺くために大芝居を打ってただけのことだ」
「……バカ二匹って」
バルドだけが表情も変えずに淡々と言うけど。アスカ妃の話をしたのは他ならぬ彼なのに。まさか騙されて悔しいから、じゃないよね?
あたしが恐る恐る訊いてみれば、バルドは「そんなのはとっくに知っていた」と断言。さいですか。
「なら、どうしてアスカ妃……お母様をあんなに悪く言ってたの?」
「周囲に無数の市民が居たからな。誰が聞き耳を立てているかわからない中でばか正直に真実は話せない」
「……そっか、そうだよね。だけど。あたし……しっかり騙されてバルドを励ましちゃったじゃないさ」
今度からもっとちゃんと確かめなきゃ、と落ち込んでいると。バルドは軽く頭を叩いてくれた。
「いや、あれでいい。おまえはそのままでいろ。それが一番だ」