異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
そこで、全てのパズルのピースがはまった。
水瀬の巫女だったお母さんを狙った連中は【闇】で、皇帝陛下でさえ護りきれなかった厄介な相手。だから、皇帝陛下は唯一の手段として異世界――日本へ逃がすことにした。
皇后陛下と評議長という宮廷の内外でとんでもない影響力を持つ人間を相手にすれば、さしもの皇帝陛下だとて護りきれなかったのも道理。
ライネス皇子が異世界へ逃げる手段を知っていたのも、そう誘いかけてきたのもそう。兄弟の争いということよりも、彼は母や伯父がこれ以上悪事に手を染めて欲しくはなかったんだと思う。
彼は、知っている。
かつて、ライネス皇子はユズを拐うためにセイレスティア王国へ赴き彼女と会ったことがあると聞いた。
それは皇帝陛下が知らないことで。皇后陛下か評議長が命じたのだろう。
結局はティオンバルト王太子が奮戦し、ライネス皇子が引いたことで決着が着き。今は友好的な関係を築けてるけれど。もしかすると闇の連中は水瀬の巫女の代わりをユズにさせるつもりだったのかもしれない。
いずれにせよ、奴らがしたことは到底許されるものじゃない。
最後の水瀬の巫女として、あたしは決着を着ける義務がある。
思わずバルドを見ると、彼は微かに頷く。そっと手を重ねてその確かな存在感とぬくもりを感じたあたしは、勢いよく顔を上げて皇帝陛下をまっすぐに見据えた。
「勅命、確かに賜りました。水瀬の巫女として、精一杯務めさせていただきます」
さあ、戦いを始めよう――全てを終わらせるために。