異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



キキさんの彼は癖のある黒い髪に蒼い瞳だけど……あれれ? と首を傾げる。何だか、ちょっと秋人おじさんに似てる?


「連れが唐突なことを言い出し申し訳ない」


キキさんの恋人がお詫びを入れてくれたけど、あたしはパタパタと手を振ってとんでもない! と答えた。


「い、いえ。あたしも……同じ出身者がいたと知ってびっくりしました。それで……どういった事情で、あたしが呼ばれるんですか?」


ライと名乗ったキキさんのカレシは、素早く辺りに目を配る。その慣れた様子に、もしかすると一般人でない? と感じさせるものがあった。


彼がなにかをつぶやくと、薄い膜が周りに張られる。ゼリーみたいなぷよぷよで、触ったら気持ちよさそう。


「これで、私たちの会話は他者の耳より遮断できます」


ライさんがそう説明してくれたことで、彼が最低限の魔法を使えると知った。そういえば、セイレスティア王国は魔法の盛んな国でもあったっけ。


「単刀直入に申し上げると、王太子妃殿下は強い郷愁をお持ちでいらっしゃいます」

「郷愁? ホームシックのこと?」

「日本ではたぶん、そのように表現する感情かと思われます」


何だか、ライって人はいちいち堅苦しい。もしかしなくても、すんごい堅物? まるで軍人みたいだ。


(こりゃキキさんも苦労しそうだわね~)


なんて他人行儀に考えていると、当のキキさんが言葉を付け加えてきた。


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