異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



箱の中に入っていたのは、色とりどりのマカロン。ピンク、緑、黄色、オレンジ、紫……。いろんな色彩の、ころんとした可愛らしい形に、思わず頬が緩んだ。


「これ……もしかして手作り?」

「はい。ユズ妃殿下が心を込めてお作りになってました」

「そう……ありがとう」


ライベルトが淡々と返してくれた事実に、ふんわりと胸があたたかくなる。


きっと、ユズは材料から育てて自ら作り上げたんだろうな。お菓子を作るのが得意と話してたから、自分の手で焼いたこれをお祝いにしてくれた。


マカロンはあたし達が日本にいた象徴。同じ土地で同じ時間で女子高生をしていた見知らぬあたし達が、こうして異なる世界で知り合えた。友達になれた。


あたしもユズも、この世界で生きていく。そう決めた。


それでも元の世界が懐かしくて、ホームシックになる時も悲しい時も寂しさもあるだろう。それを乗り越えて幸せになりたい、そんなたくさんの気持ちがこのマカロンには込められてる。


同じ境遇で違う国の皇子·王子の妃になったあたしたち。ずっと変わらない友情を結びたいと願う。


それから、ユズは自分の力で出来る精一杯のお祝いということでマカロンを焼いたんだろう。王太子妃であるから国庫からお祝いを出せば良いかもしれないけど、ユズはそれを気にしてた。自分のわがままで税金を無駄にしたくないと。


だから、自分の手で出来ることを考えて実行してくれたんだろう。それだからとても嬉しかった。


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