異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
贈られた包みはもう一つあった。
それを解くと、中から出てきたのは瓶に入った色とりどりの粒。薬のようにも見える。匂いはしないけれど、とても清浄な空気を感じる。まるで、大自然の息吹そのもの。
「これは……もしかすると言霊の霊薬」
「はい」
ライベルトはハッキリと肯定した。
「ユズ様がおっしゃいました。それを摂取すれば、【闇】を寄せ付けぬ効果があると。ただし……丸1日しか持続しないとのことです」
「そうですか……ありがとう」
大きな瓶には何百粒もの霊薬が入っている。きっと一粒一粒丁寧に作り上げてくれたんだろうな。
【闇】について知った上でこうして防ぐ霊薬を作ったということは、相当情報を集めたんだ。ユズは約束通り……ううん、それ以上のことをしてくれた。
胸を打たれたあたしはじわりと熱くなる目尻を押さえ、それからゴシゴシと手のひらで拭った。
「ありがとう……いつか必ず、ユズが困った時には恩返しさせてもらうから。これはありがたく使わせてもらうね」
【闇】との本格的な戦いを前にすれば、こういった霊薬はいくらあっても足りない。本当は国民全員に配りたいくらいだけど、何千万人もの霊薬を用意するなんて現実的に不可能だ。だから、これから討伐に向かう特殊部隊と皇帝陛下を中心とする中枢部辺りに使うしかない。
それでも足りないかもしれないけれど、ないよりはあった方がいいに決まってる。中枢部が【闇】に侵されてしまえば、国自体がガタガタになる。ユズの援護はかなり心強いものだった。