異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「それで、あなたはこれから……」
あたしがライベルトに問いかけ掛けた時、ドアの向こう側が急に騒がしくなった。当然快く思わないだろうミス·フレイルが眉をひそめてた。
「申し訳ありませんが少々お待ちください。静かにするよう注意して参りますので」
スクエアタイプのメガネを煌めかせた彼女は、静かに歩み寄りドアノブに手をかける。さあ開く、と言う瞬間――ドアが急にバン!と開いた。
「ぎゃっ!」
ミス·フレイルが甲高い声を上げた後、姿勢を崩し転びそうになる。そんな彼女を受け止めたのが、唐突に部屋に現れた人間で。ミス·フレイルは怪訝そうに視線を上げ、メガネを直した途端に眉を寄せた。
「ライネス殿下……またあなたでございますの!? このような時間にあれほど淑女の部屋に訪問されぬよう申し上げておきましたのに、まだご理解頂いておりませんか!?」
「まぁ、まぁ。そんなに眉間にシワを寄せると早く老けるぞ、ミス·フレイル」
「老け……! わ、わたくしの顔などどうでもよいのです。それよりもお早くこちらよりご退出なさいませ。無礼にもほどがあります!!」
甲高い声で喚くミス·フレイルを前に、からからと笑うライネス皇子は、まったく以前と変わらない。何らか謀略を持ってこちらを陥れようとしているなんて思えなかった。
「殿方ならもう一人いるだろう、俺たちの異母弟(おとうと)が。なあ、ライベルト?」
ライネス皇子は無遠慮にも、衝立の向こう側からひょいっと覗き込んできた。