異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「兄上……いや、ライネス殿下。お久しぶりです」


ミス·フレイルの雷が落ちている最中でも、ライベルトは変わらず生真面目なまま。異母兄に礼を尽くして挨拶をする。


「殿下などこそばゆい呼び方をするな。おまえが派遣されたということは、セイレスティア王国でも帝国の政変への憂慮があるのだな」

「……」


ライネス皇子が気楽に話しかけているのに、ライベルトはそれに対して答えない。もともとディアン帝国の皇子として生まれたライベルトも、今は臣籍降下していち臣下に過ぎない。セイレスティア王国王太子の腹心である以上、異母兄相手でも全てを話すという訳にはいかないんだろうな。


「ふ、やはり変わらぬな。相も変わらず生真面目なやつ」


ライネス皇子はククッと喉の奥で笑うと、今度は体全体を衝立から出してこちらへ歩み寄る。その前にミス·フレイルが陣取ると、彼女を素早くスルーしてまた喚かせた。


けれど……


次にライネス皇子の前に立ちはだかったのは、護衛であるロゼッタさん。


彼女は油断なく構えたまま、目の前にいる皇子を睨み付けた。


「それ以上勝手に近づくな。近づくなら斬る」


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