異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ライネス皇子は口元に笑みを浮かべ、殺気立つロゼッタさんに近づいてく。あくまでもあたしでなく、彼女に向かってまっすぐに。
「それ以上近づくなら、斬る」
「構わぬよ、おまえにならば」
ロゼッタさんの威嚇などものともせずに、ライネス皇子は歩み寄る。ロゼッタさんの緊張感が最高潮に達し、プツンと切れる直前――彼女が動いた。
ギィン! と火花が散りそうな激しい金属音が耳をつんざく。鍛えた経験があるあたしでも認識できないほどのスピードで、ロゼッタさんが短剣を繰り出し、ライネス皇子は自分の腕輪でその剣撃を受け止めたんだ。
まさに、目にも止まらない速さ。
2人はつばぜり合いにも似た状態で、互いに睨み合う……と言っても睨んでるのはロゼッタさんだけで。ライネス皇子はむしろ嬉しそうな顔。もしかするとM?
「いいぞ、ロゼッタ。これほど気が強く、忠義に厚いおまえは最高だ」
「馴れ馴れしく名を呼ぶな!」
ロゼッタさんは攻撃の手段を変えたのか、一旦引いて飛び退くけど。ライネス皇子はしつこく彼女に着いていった。
「寄るな!」
「まぁまぁ、いいじゃないか。おまえはいずれ俺の妃になるのだからな」
「意味が判らない。気でも触れたか」
「ふ、今は解らずともよい。世の中が治まったらいずれな」
そんなやり取りを経て、ライネス皇子はあたしに向き直った。
「さて、水瀬の巫女。俺は俺なりに決着を着けたい。だから、あんたに協力しに来た」