異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ライベルトのお母様が……」
今まで起きた事を鑑みれば、【闇】側がかなり卑怯な手段を使ってきたのは判る。他国の王女が嫁いできたなら、必然的に第一の妻……つまり正妃に。立后して皇后の地位になるのは自然なことだ。
友好の証しとして嫁いできたのならば尚更、重みのある地位に就けて大切に扱っていると示さなきゃ。でなければ国としての体裁も保てないし、周囲も相手も納得しない。
そして、そんな方が御子を生めばその子は自然と有力な皇位継承者となる。既に2人の皇子がいても、ひと足飛びに越えて皇太子となる可能性は高い。
現代日本では信じられないけど、妻が複数いる場合は生母の身分一つで子どもの立場や扱いに差が出ることは珍しくないんだ。
古代大和を舞台にしたマンガをセリナに貸してもらって読んだことがあるから、それからの知識なんだけど。
だから、ライベルトはお母様があのまま宮廷に留まっていたら、立后したかもしれないし。ライベルトも皇子という身分のまま、立太子したかもしれなかった……ということ。
「邪魔だから、離宮に追い出されたの」
「いいえ、違います」
急に口を挟んだのは、ミス·フレイル。今の今まで何があっても沈黙を守りと押して決してでしゃばらなかった彼女が。意外に思って見ていると、「失礼します」と頭を下げた。
「ご無礼をお許しくださいまし。ですが、ライベルト様のお母君が隔離されたのは皇帝陛下のご意志には違いありませぬ。ですが……あのままでは妃殿下ともどもお子のお命も奪われる懸念があったからでございます」