異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



ミス·フレイルの証言は、おそらくかなり信憑性が高い。真面目一途で、己の範疇を超えることは一切しなかった彼女が、自分の信念を曲げてまで話してくれた。それはたぶん、人としての感情から。


使命感以上に大切なことだ、との衝動に突き動かされて。


二十数年結婚もせずひたすら国と皇族の為に仕えてきたミス·フレイル。そんな彼女が心のままに動いてくれたことは驚いたけど、同じ人間として嬉しく思えた。


「そうですか……ありがとうございます。あなたのお話は真実なんでしょうね。皇帝陛下は王女様をお守りするため、心を痛めながらもやむなく彼女を離宮へ」

「はい。当時はどなたも逆らえませんでしたから……今はまだ改善されてはいますが」


ミス·フレイルが言いたいことは、おそらく当時はまだ幼すぎた皇族が今は成人しているということ。第一皇子のバルドと、第二皇子のライネス。第三皇子だったけど、臣籍降下し他国へ行ったライベルト。


他にもたくさんの皇子や皇女がいる。成人すればそれなりの役割や地位を与えられるから、いつまでも評議長の寡占状態とは限らない。


特に、今ここには評議長の切り札だろうライネス皇子がいる。彼は母親や伯父を止めたい、と協力を申し出てきた。スパイでは? なんて疑いはない。彼の中にあるのは火のような使命感しか溢れてないのだから。


どうやら巫女は人の本質に触れる能力もあるみたいで、裏切りそうな人は瞬時に判る。だから、ここにいる人たちは命に替えても信頼に足るんだと安心できた。


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