異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ユズ様は、平気だと強がってらっしゃいますけど。わたしには解るんです……お寂しい気持ちを隠してらっしゃるのだって。二度と帰れないと解ってるからこそ、せめて同郷出身の和さんに慰めていただけたらと」
「え、ちょ……ちょっと、待って!」
慌てて手を突き出したあたしは、思わず椅子から立ち上がってテーブルに手を着いた。
「二度と帰れないって……そう言った?」
「え、はい……大陸有数の魔術師であられるティオンバルト王太子殿下もおっしゃってましたが、喚ぶことはできても還すことは叶わない……と。方法もわからないとお話されてました」
「……」
まるで、全身に重石が載ったようで。膝から力が抜け、へなへなと椅子に腰を落とす。
帰れない……?
帰る方法が、ない?
「そんな……そんなのって、ない。あたしは……望んできたんじゃないのに!」
バン! と拳でテーブルを叩いた。揺れてフルーツが落ちたけど、膜が張った視界の向こうでは滲んでよく見えない。
「なんで? ……どうしてみんな、あたしに勝手に期待をするのよ。あたしには何の力もないのに……何の役にも立ててない! 勝手に喚ばれて、期待されたって。あたしにだってどうしようもないじゃない!
あたしにだってそれまでの生活だって……友達だっていたのに!
帰して……あたしを日本に帰してよ!!」
ヒステリックに叫んだあたしは、その場でしゃがみ込んで顔を覆う。
みっともないけど、もう我慢なんて無理。いろいろな我慢で擦りきれた神経では、涙を抑えるなんてできない。
「ナゴム、ナクナイデ」
ロゼッタさんのたどたどしい慰めも、今は虚しく響くだけだった。