異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ふむ……やはり面白いな」
ライネス皇子は腕を組むと、ニヤリと笑う。
「兄上も果報者かもしれないな。なかなかそこまで言える女は居ない」
さて、とライネス皇子は組んだ腕を解いてドアへ向かう。
「そろそろ猜疑心が強い兄上が来るから失礼しよう。もっとも、信頼はされているだろうから心配はしないがな」
「あ、あのライネス皇子」
あたしは急いで霊薬の瓶を取り出すと、一粒だけ彼に向かって差し出した。
「もしも本気でお母様や伯父様を止めたいなら、これを飲んでおいてください」
「これは? 何らかの力を感じるが」
「ユズ妃殿下手ずからお作りになられた霊薬です。邪なものから1日護っていただけます」
あたしよりも早くライベルトが説明をした。もしかすると、彼も異母兄を信頼して期待をしているのかもしれない。この帝国の暗部を排除するための手助けを。
ライネス皇子はあたしの手から銀色の霊薬を取ると、躊躇うことなく口に放り込む。そして、そのままかみ砕き一気に飲み込んだ。
……本当に、何の躊躇もしなかった。つまり、毒薬とかなんて微塵にも疑ってない。ひいてはこちらを完全に信用しているということに他ならない。
「なかなか美味いな。これで妙なモノに支配される懸念が無くなるなら安いものだ。ライベルト、礼を言うぞ。王太子妃にも感謝を伝えておいてくれ」
ライネス皇子はそれだけ言うと、スタスタと部屋を出る。入れ替わるように足を踏み入れてきたのはバルドだった。