異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ライネス皇子は兄にひらひらと手を振るだけで、さっさと立ち去った。バルドも何も言わずに見送り、そのままこちらへ顔を向けた。
「久しいな、ライベルト」
「ご無沙汰しておりました。バルド殿下もご健勝のようで何よりでございます」
異母とはいえ兄弟同士顔を合わせるのは半年ぶり位だから、もっと気安くても良いのに。やっぱり立場がそうさせないんだろうな。
「どうやらセイレスティア王国はこちらへ肩入れ下さるらしいな」
「はい」
ライベルトは臣下の礼を取ったまま、バルドの発言を肯定した。
「こちらがティオンバルト王太子殿下よりの書簡です」
「ふむ」
ライベルトが懐から取り出したのは、一見薄汚れた封筒で大したものでなく見える。だけど、封筒から出したものは真新しく美しい薄紙。ティオンバルト王太子殿下直々に託したという密書は、おそらくバルドにとって朗報に違いない。
「王太子殿下はこちらへの全面的な協力を約して下さるか」
「はい。その為にわたくしを遣わされました。バルド殿下の手足となり、事態の収拾に努力せよ……と」
ライベルトは相当な決意を滲ませて、兄を見上げてきた。