異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ティオンバルト王太子殿下、ユズ妃殿下。ともにこの度、一連の件に関しまして……犯人の目星をつけられております」
「それでおまえを寄越したか」
「はい」
ライベルトは相当な決意を持っているようだった。上司の命令とはいえ、彼の身分であれば拒むこともできる。それだけの力を血を持っているのに、敢えて受け入れているということは。
「……ライベルト、あなたにお訊きします。少なからず私情があって自らこの役割を買って出たのではありませんか?」
あたしがそう指摘すると、彼は驚いたように両目を見開いた。
「……なぜ、そのようなことを?」
ライベルトに警戒感丸出しで訊き返されて、こりゃ容易く答えてはくれないなと思う。
だけど、危険で困難な戦いの前にはどうしても確認をしておきたかった。
いくらセイレスティア王国の支援があるとはいえ、相手は大陸最大の強国である帝国を二分する力を持っている。セイレム王国の二の舞にならないよう努力はするけれど、どうなるかまではあたしでもわからないんだから。
「いいえ。今までのあなたを考えれば、自ら使者に赴くのは自然なこと。ただ、以前お会いした時よりも守るべき大切な何かが出来た。だから、自分が敢えて危険を冒してもその脅威を取り除きたい……そういう風に見えたものですから」