異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



ライベルトとは旅をしていた時とセイレム王国で会ったくらいだから、彼を完璧に知っている訳ではないけれど。いつも冷静で生真面目な軍人だったとは記憶してる。


軍人は任務や命令に対し忠実でなければいけない。それらを完遂するためには、自らの命を差し出す覚悟がないと。


彼はその点で言えば型通りの軍人。堅苦しくて融通が利かない、真面目で頑固一徹。上司から死ねと言われれば、何の躊躇いもなく命を断つだろう。それくらい、骨の髄まで軍人……それが以前のライベルトだった。


けれど、今の彼には僅かに感情の揺らぎが見える。人間として当然持つべき私情を、今の彼は抱いてる。


……自分よりも、自分の命よりも大切にしたい人が出来た。それゆえの揺らぎだ。


人間らしい、感情の変化。


ただ任務に忠実な以前のライベルトよりも、今の彼の方が遥かに好感が持てる。


「……ここにはわたし達の信頼に足る人たちしかいません。無責任に喋らないことは保証しましょう」


今、部屋の中にはライベルト本人、バルド、彼の侍従長、あたし、護衛のロゼッタさん、ミス·フレイルくらいしか居ない。


腹心中の腹心と言っても過言ではない顔ぶれに納得したか、ライベルトは長く嘆息をしてゆっくりと頭を下げた。


「……はい。今回はわたくし自ら志願いたしました。……故国で待つ彼女の為に……でございます」


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