異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



《楽しみじゃな。何が起こるか》


……アスカ妃と同じ事を言う人がここにいますよ。


ちなみにヒスイは実体化した上、侍女のふりしてメイド服を着てるけど。元々の美貌のせいであたしより遥かに目立ってる……。


「頼むから大人しくしててよ。あんたただでささえ目立つんだから」

《仕方なかろう。わらわの美貌と品のよさは隠しきれぬ。にじみ出てしまうはわらわの責任でないわ》

「……ハイハイ」


そんなのんびりしたやりとりをしているけど。今、あたし達は後宮に向かってる。皇后陛下主催の晩餐会に出席するために。


後宮こそ皇后の思いのままになる場所だろうけど、何と言ってもそこにはバルドのお母様であるアスカ妃がいる。彼女が唯々諾々と従い流される大人しい妃なら、まだ後宮の現状は違っていただろうけど。


今のところ、アスカ妃という対抗勢力があるからか。皇后陛下は後宮を完全に支配するには至らなかったみたいだ。


『和様、言動にはくれぐれも注意くださいませ。皇后陛下に少しでもお咎めを受けられましたら、ご婚約もご婚姻も白紙となってしまいます』


ミス·フレイルはいつもの鉄面皮のまま……とは言い難く、さしもの彼女も緊張をした顔をしてる。ミス·フレイルをこれだけ恐れさせる皇后陛下……一体どんな人なんだろう? と想像してみたけど。


頭に浮かんできたのは、アスカ妃よりごつくたくましいゴリラのような女性だった。


< 827 / 877 >

この作品をシェア

pagetop