異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
視界の隅に赤いものが見えてそちらを見ると、こちらへ向かって赤いボールが転がってきた。
ここは後宮への渡り殿に繋がる城の廊下の間。こんな場所に?と疑問に思いながら、足元に転がってきたボールを手にした。(もちろん屈むといけないから、膝でしゃがんで)
ボールはずいぶん繊細な細工をされたもので、革で作られてる。
気配を感じてふと顔を上げれば、幼い女の子が柱の陰からこちらを見てた。
まだ12歳くらいに見える。シルバーブロンドの髪をゆったりと結い上げ、金糸で刺繍され真珠を散りばめた赤いワンピースドレスを着てた。
けど、初めて会ったはずなのにどこかで見た気がするのはなんでだろう? 特に印象的な紅い瞳が心をざわつかせる。
今のところ、彼女から悪意は感じ取れない。
「これ、あなたの?」
あたしが片手でボールを差し出すと、女の子は躊躇いがちにこくりと頷いた。
ずいぶん内気なのか、全然話そうともしない。後宮に繋がる廊下で会ったから、もしかすると皇帝陛下のご息女であられる皇女殿下の可能性は高い。 年まわりから言っても、まずそうだろうな。
なら、バルドの妃になるあたしとは義理の姉妹になる。ここで良い印象を与えて仲良くしておかないと。
「ボール、お渡しします。そちらへ行ってもよろしいですか?」
警戒させないためになるべく柔らかい笑顔を浮かべたはず……なのに。どうして見る間に顔が青ざめ涙を浮かべながら震えるのでしょうか? 意味不明なんですが。