異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
(落ち着いて……誰も今のあたしを傷つけることはできない。なら、気を強く持っていればいい)
一瞬パニックになりかけたけど、ヒスイのペンダントとバルドの腕輪の存在を確かめて気を落ち着ける。自分を信じて……。
目をつぶり、感覚を研ぎ澄ませる。深呼吸ののち、意識が微かに広がって。今はどういう状態なのかが把握できた。
(これは……誰かの、残留思念? その人の意識に……入り込んでる?)
すると、目の前にいる女の子はやっぱり実在の人物ということ。あたしが彼女の無意識の領域に入り込んでしまったのなら、誰も居なくなったことも納得できる。
あたしは女の子の涙を拭い終わると、彼女をギュッと抱きしめた。これだけ怯えて泣いているということは、兄に理不尽な事をされているんだろう。
助けてあげたい……と。純粋に思う。これだけ小さな子ども、自分で何とかしろというのは酷な話だ。
「大丈夫、わたしが助けます」
「ホント……?」
女の子は訝しげな声であたしを見上げる。そりゃ、ろくに知りもしないくせに安請け合いして。自分でもバカだなって思うけど。こんなにも困ってる女の子を見過ごすことなんてできないから、仕方ないじゃんね。
「はい、必ず。わたしは和と言います。あなたのお名前は?」
女の子はしばらく躊躇いを見せた後に、おずおずと口を開いた。
「……マリィ」
「マリィ様、ですね。わかりました……必ずわたしが助けますから!」
引き戻される! と感じた瞬間――あたしは彼女の手を掴んでしっかりと伝える。
そして。
次に目を開いた時、あたしは元の場所に立ってた。