異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
『和様、いかがなさいましたか?』
ミス·フレイルが訝しげにこちらを見てる。たぶん、急に立ち止まったから不思議に思ったんだろう。
つまり、実時間ではそれほど長い間の出来事でなかったらしい。
「あ、ごめんなさい。アクセサリーが気になっただけですが、すぐに直りましたから何でもありません」
曖昧に笑って誤魔化すしかない。まさか、他人の意識に入り込んでました~なんて。こんなリアリストの代表なお方に通じるはずもない。
それでも、あたしがアクセサリーのことをうっかり口に出したから、ミス·フレイルと直す直さないの攻防を繰り広げる羽目になったけど。
《和、今そなたの意識が他の意識を捉えておったな?》
《……まあね》
ヒスイからのてれぱしぃで、あたしは否定せずにいておいた。彼女は全てを判っていただろうし。
《なるほど。ずいぶん力の使い方に慣れてきたな。であれば、【闇】もほぼ手出しできぬ領域に来ておるということじゃ。何も案ずることはあるまい》
ヒスイがそれだけ認めてくれることは珍しいけど、自分がそうやって評価されるのはやっぱり嬉しい。
《そっか。ありがとう……でも、気を抜かないで頑張るね》
《そうじゃ。何があるかは最後までわからぬからな。油断大敵じゃ》