異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



とうとう、着いた。


後宮の中で唯一皇后陛下のみが使用を許される迎賓館。その大広間を前に、高まる緊張を抑えられない。


ミス·フレイルをはじめとする皆には、ユズが作った特製の霊薬を飲んでもらった。ロゼッタさんには、ライネル皇子の腕輪もある。ヒスイとあたしには紅い霧も黒い霧も通用しない。


それに、いざとなればあたしが巫女の力を。誰かに危険があれば、躊躇いなく使うつもりだ。


皇后陛下のご機嫌取りよりも、皆の安全を最優先にしたい。


それでバルドとの婚約話が破談にされようとするなら、それでいいじゃない。そんなの、根性で噛みついて反抗してやるんだから。


(日本育ちの庶民のど根性を舐めないでよね!)


ふんっ! と鼻息も荒く、ドアを睨み付ける。ヒスイが呆れて何やらごちゃごちゃ言ってきたけど、スルーだわ。スルー!


見事な細工の重そうなドアが衛士によって開かれる。一瞬――あまりの眩しさに目が眩みそうになった。


光の洪水。陳腐な表現だけど、そうとしか言い表しようがない。


黄金色と白金と銀色の調度類や鏡が、天井や壁や燭台からの光を反射して。室内が輝いて見えた。


(すごい……なに、この成金趣味)


思わず絶句。それほどまでに、大広間の室内はあらゆるものが黄金や白金で埋めつくされていて。それ以外は極彩色の宝石で飾られてた。


黄金の燭台や椅子なんて初めてこの目で見ましたよ。


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