異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
後宮に入る前から、最大級の警戒はしてきた。
けど、マリィと名乗る女の子以外に特に変わったことはない。何かを仕掛けられた様子も見られず、何より今は悪意の欠片すら感じない。
今のあたしは人の感情をおおよそ把握出来る。皇后陛下の笑みに邪気はなく、あたしを陥れようとする悪意もない。ただ、あたしを利用して息子を皇太子にしようとする意図は感じられた。
アスカ妃は相変わらず分かりやすく感情を顔に出してる。不機嫌というよりはつまらない、と言いたげに既にお酒に手を伸ばしてた。
他のお妃様がたも揃ったところで、アイカさんが意外な登場の仕方をした。
ライネス皇子を伴っただけでなく、誰よりも親しげに彼にべったりと張りついていたのだから。
あれれ? あなた方は異父兄妹じゃなかったんですか? と目が点になりますよ。
ライネス皇子もあれだけロゼッタさんを口説いてたのに……と呆れそうになったのはほんの束の間。彼の意図を薄々察したあたしは、それを納得するしかなかった。