異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



『アイカ、久しぶりじゃな』

『はい、ご無沙汰しておりました。アスカ妃殿下もお変わりないようで何よりですわ』


アスカ妃がアイカさん先に声を掛けたけど、どうやら最近二人はあまり交流を持っていないらしい。以前は娘の様に可愛がってらしたけど、やっぱりアスカ妃も皇妃として何を優先すべきかが解ってらっしゃる。


アイカさんと親しくして実子のバルドを遠ざけたのも、皇后派をはじめとする人々の目を誤魔化すため。

出生当初から第一皇子として皇太子の有力候補だったバルド。アスカ妃の生家は後ろ楯となるにはあまりに弱く、皇后陛下と評議長という2つの圧力から守る盾にはなり得ない。


アスカ妃はあくまでも一人の妃で、第一夫人という位はあっても身分も地位も権力も皇后陛下には到底及ばない。


成長するに従い、バルドの有能さは群を抜いていた。長子として皇太子になるのは時間の問題。けれど、皇后もさほど年が変わらない第二皇子を生んでいる。皇后の長男という立場から、バルドの強力なライバル。当然評議長も皇后も第二皇子を皇太子にと望むだろう。となれば、バルドは排除される可能性が高い。


ならば、とアスカ妃は皇后陛下の向けてきた“悪女”の汚名をわざと着てそれらしく振る舞い、我が子を遠ざけた。悪意ある者たちから守るために。


予想通りにバルドは突き放されたことで更に成長した。


< 839 / 877 >

この作品をシェア

pagetop