異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




「冷静に見えて熱い……おまえは、父上に似ている」

「あの人は、私の父などではありません」


きっぱり言い切ったライベルトさんには、何の迷いも見られない。清々しいまでに、セイレスティアの人間なのだと言えるなんて。


あれ、でも……ライベルトさんが第3皇子なら。兄と呼ばれたこの人は第1か第2皇子ってことになる。セリス皇子が第2皇子だから、第1皇子でないとおかしい……って、ああ! ややこしい。


けど、どう見てもライベルトさんは二十歳を幾つか過ぎてる。老けて見えるならともかく、見た目通りならセリス皇子の話との年齢が合わない。2人の情報が食い違うことになる。


「あの、セリス皇子って……あなた方の兄なんですか?」

「セリス?」


なぜだか、ライベルトさんは怪訝な顔をした。あれ? あたしはマズイことを言いました?


彼は眉を寄せたままあたしを見て何やら考えてる。しばらくして口を開いたけど。そこに、ぶっきらぼうな声が被さった。


「そいつがホンモノならば、少なくともこれを手にしていたはずだがな」


バサッ、と布が捲れる音が聞こえてすぐ、目の前にひとつの腕輪が示された。


それは、たぶん紋章の一種であろうデザインが刻まれた、見事な細工の白銀色の腕輪。黄金色に輝く宝石が填められ、ドラゴンとも海龍ともつかない生き物に、知らない花と蔦が絡み合っている。


< 84 / 877 >

この作品をシェア

pagetop