異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《ふふ、ずいぶん挑発的なようで何よりじゃ》
あのヒスイだって大人しくしてるはずもなく、侍女の服を着ていてもアスカ妃以上にプライドの高い彼女は不敵な笑みで皇后陛下を眺める。
《そなたには確かに巫女の血縁であろうが、水瀬の力は血で受け継がれる訳ではない。愚かな頭では解らぬか?》
「……って、ちょっと待ってよ!」
あたしは思わず椅子から立ち上がり、ヒスイに向けて怒鳴りつけた。
「あんた、そんな重大なことを知ってて、今まで隠してたってわけ!?」
《隠してなどないわ。訊いてこなかったのはそちらであろう。なぜ、わらわが何もかも喋る必要がある?》
ヒスイは涼しい顔してぬけぬけとおっしゃる……さすが、根性がねじ曲がりまくった底意地の悪さは天下一品ですわね。
地団駄を踏みそうになって、ようやく周りの呆気に取られた視線に気づき、コホンと咳払いをして席に戻る。
「……皇后陛下があたしの血縁ってマジなの?」
《先々代……瞳の母は双子の姉妹のうちの妹であったが、その姉がアロハイド家の妾となったようじゃな》
「へえ……って! じゃあなに? もしかして皇后陛下って……お母さんの従姉妹なの!?」
あたしが呆然として皇后陛下を見遣ると、彼女はにこりと微笑んだ。
『では、始めましょうか……皆様、どうぞわたくしの晩餐会を楽しんでいらしてくださいませね』
皇后陛下がそう微笑んだ瞬間――あたしのお腹に、鋭い痛みが走った。