異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第43関門~戦い、そして――。
誰――?
誰かが、叫んでいる。
鋭い痛みは断続的にお腹を襲い、あたしは両手でそこを押さえて膝を着いた。
「なごむ!」
護衛のロゼッタさんが駆けつけようとしたけど、あたしは「来ないで!」と強く諌止する。
ロゼッタさんには見えないだろうけど……あたしの周りを再び黒い靄が取り囲んでいる。
(あたしを傷つけることは出来ないはず……なのにこの痛みは)
あたし自身は誰だろうが何だろうが物質的に害することは不可能……なら。
あたし以外の“存在”なら――たとえ体内にいても傷つけられる?
(まさか……)
ドキン、と嫌な予感が心臓を踊らせる。
けれど……あたしの中では確信を得てる。胎内にいるはずの命に異変があったのだと。
周りから見れば、あたしが勝手に腹痛を起こしただけに見えるだろう。
けれど、実際は皇后とアイカさんの【闇】で赤ちゃんが傷つけられたんだ。
(許さない……)
あたしの中で憎しみに似たものがわき上がりかけた。けれど、それを強く止めたのが淡く輝く腕輪の存在。
バルドに贈られた唯一無二の証が、あたしの痛みを和らげ気分も鎮めてくれた。