異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



誰かが、息を飲んだ音が聞こえた。


今の今まであたしの懐妊は伏せられていた。主にあたしの希望で。


有力な皇太子候補の子ども。表沙汰になれば排除しようとする輩が出るのは確実だったし、何よりまだ婚約もまだな仲で先にできちゃった……なんて。本当にバルドとの子どもか疑われる可能性がある。だから、なるべくギリギリまで明かすまいと考えていたのだけど。


皇后は何の躊躇もなく、あたしのお腹に宿る命を奪おうとした。もはや、体面だの何だの気にしてる場合じゃない。


バルドとの子どもなのだから……母親としてあたしが精一杯に守る。


睨み付けているというのに、皇后は相変わらず悠然と微笑む。また煙に巻くと身構えたところで――彼女が出してきた答えは意外なものだった。


「ええ……だって邪魔ですもの。あなたも……バルド殿下の“息子”も」

「……!」


あたしが思わず反射的に手を伸ばした瞬間。ものすごい圧力というか衝撃が周囲に襲いかかった。それはあまりに唐突で、ごく普通の人間である他の妃や侍女は吹っ飛ばされる。けれど、あたしが風で衝撃を和らげそのまま下の絨毯をクッションのようにし彼女達を受け止める。


一応怪我はあったかもしれないけど、あまり大事に至らずよかったと胸を撫で下ろす。


そして、本性を隠そうともしなくなった皇后をキッと見据えた。


< 845 / 877 >

この作品をシェア

pagetop