異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……あなたが守るべきはなんなのですか?」
「……」
「経緯はどうであれ、あなたは皇后というこの国の女性では最高の位に昇った。ならば、その位に見合う責任や責務はあるはずです。それを果たさずただ権力を振るい、利益を貪るだけならば、あなたがその地位に就いた意味はないと思います」
腹などとっくに括った。この帝国でもっとも地位の高い女性である皇后陛下に、何の地位もない平民がこんな発言をするなど。不敬罪で捕まり投獄されてもおかしくない。
けれど、後宮にいる他の妃は彼女を怖れたり遠慮し過ぎて、彼女に忠告など難しい。アスカ妃がでしゃばると後宮の勢力争いが関係してくる。ならば、まだ無関係なあたしが彼女に言わなきゃ。
正直な話、怖くはある。でも、あたしは水瀬の巫女でバルドと共に生きると決めた。この国で生き抜いて……最期を迎える時まで。この国のために生きると。
生半可な覚悟などしてない。
命を賭けたっていいんだ。
バルドのために……そして生まれる子どものために。彼らが将来治めるかもしれない国が少しでも穏やかであるように。自分ができることは精一杯する。それだけだ。