異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




「このような不慮の事態が頻発する中では、晩餐会の続行は不可能とわたくしは判断致します。皆様の安全をご配慮頂ければ幸いでございます」


流石、20年以上誠心誠意皇室に仕えてきたミス·フレイル。彼女の胆力には舌を巻くしかない上に、この事態にあって尚も皇后や他の立場を考慮した最適な判断をしている。今は、彼女の進言に従うのが一番いい。


彼女はあくまでも皇后の異変を公にせず、曖昧にしたまま彼女を他者から離してその立場を護ろうとしてる。そして、他の妃やひいてはあたしやライネス皇子までも。


今は、ミス·フレイルの判断に素直に従おう。あたしだって皇后を断罪するのに、ことを大きくしたい訳ではないから。


「……そうですね。怪我をされた方はいらっしゃらないとはいえ。突然の突風が吹いたりしましたから。わたくしも止められた方がよろしいかと」


それまで大人しくしていたアスカ妃もミス·フレイルの意図を汲んだのか、彼女の言葉に賛同する。流石に皇后に次ぐ地位を持っているだけある皇妃の発言に、他のお妃達からも賛成の声が上がった。


「そ、そうですわね。わたくしも少々頭痛が……お許しいただければ下がらせていただきます」

「わ、わたくしも……」


皆、近寄らずともすがるようにアスカ妃を見ている。それだけ彼女は信頼し頼られているということ。


今まで散々悪評に応えた振る舞いをしてきたとはいえ、やはり彼女は慕われるに相応しい女性。それは後宮での立場そのものを表していた。


(やっぱりお母様のアスカ妃は信頼できるお方……後宮の皆様を頼みますね)


あたしはアスカ妃へそんな思いを込めて目配せすると、彼女がしっかり頷いたから改めて皇后へ向き合った。

< 852 / 877 >

この作品をシェア

pagetop