異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
まだ頭の先すら完全に見えていない古代兵器はがひとつ咆哮を上げると、紅蓮の焔が遠くへ向けて放たれる。その焔は海を越え――遥か数十キロ離れた島を一瞬で炎の島へと変えた。
ひとつの県の大きさすらある離島は、幸いにも不毛の地であるから実際に被害はないけれど。数百km規模の面積が瞬きする間に地獄と化した。しかも、その焔はすべてを溶かし焼き尽くす。
《いけない! 止めて。破壊をしないと約したはず。なぜ、約束を破る!?》
《――ニクい》
《憎い? 何を憎むの!?》
《――ヒトガ、ニクい。ワレを生んだ――身勝手なモノドモ。滅びるガイイ!》
グワッ、とまた新たな焔が生まれようとしたから、あたしは水瀬の巫女としてそれを防いだ。
焔は途中で消滅したけれど、反発力がすさまじい。精神的なダメージとなって襲いかかって来るから、思わずその場で膝を着いた。
「ナゴム、大丈夫か?」
「うん……ありがとう」
ロゼッタさんが支えてくれたから、辛うじて倒れずに済んだ。あたしはふわふわ浮いてるヒスイを見上げる。
「どういうこと? 古代兵器が……【闇】に心を囚われるなんて」
《予想外に力が強かったようじゃな。じゃが……》
ヒスイにしては珍しく眉を寄せて指先を唇につけてる。けれど、やっぱり彼女はいつもと変わらなかった。
《今ならば、まだ完全に堕ちてはおらぬ。止めることは可能じゃぞ》