異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
(待って……それじゃあ……ライネス皇子は。彼の父親は)
一番、あり得なかったことが……あってはいけなかった事態が現実のものとなる。
ライネス皇子は……実の兄妹が結ばれた結果生まれた子どもなのだと。
そんな馬鹿な……と否定したい。けれども、今まで揃った情報が全てを肯定する。
黒でなければならない髪色。ライネス皇子自身が否定した皇太子の地位。狂ったように兄を慕う反面、助けてと叫んだ幼いマリィ。
そして……今。
マリールイズは、兄に囚われるあまりに滅びを願っている。
兄であるラインハルトは……
評議長という地位にありながら、未だに独身であるという。
それは……妹を愛するがゆえに、他に妻を持たないと決めているから?
わからない……だけど。
今、彼のもとにはバルドが指揮する帝国軍が向かっている。いずれにしても終わるのに……なぜ、このひとは。そこまで……。
焔がうねる中、あたしはギリギリまで彼女に歩み寄ると、マリィに向かって叫んだ。
「もう、止めてください。あなたのお兄様は終わりです。バルドが帝国軍を率いて捕まえに向かってますから。あなたもこれ以上罪を重ねないで」