異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



どうやら七つの子はかなり広く知られているのか、アスカ妃を始めとして次々と他の女性が歌い始める。


そして……


あたしのなかの懐かしい記憶も甦らせた。


寝付けなくてぐずっていたあたしを、お母さんや秋人おじさんはこの歌で寝かせてくれた。


最初は秋人おじさんが。次第にお母さんが……この歌であたしを寝かしつけてくれたんだ。


熱いものが込み上げてくる。


この歌を……我が子に聞かせたい。あたしは純粋にそう思った。


けれど、身体中から力が抜けていく。以前と同じ、雷焔の力による余波だ。


「ナゴム!」

「お願いロゼッタさん……あたしを支えていて。最後までちゃんと見守りたい」

「わかってる。けど、無茶は良くない」

「無茶でも……やらなきゃならないの」


水瀬の巫女として力を振るい、その上雷焔に精神力を削られている。辛うじて繋ぎ止められているのは……七つの子のお陰だろう。


けれど、あたしはわかっていた。



――記憶が……消えてきていると。


雷焔が、力の発現の代償として喰らっているのは……魂の記憶。


それが終わったら……あたしはきっと何も憶えていないだろう。



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