異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
最終関門~あなたは……
風が、頬を撫でている。
草原の花畑に座って花を摘むと心が安らぐ。
「いい香り……」
この香りは大好き。何だか胸があたたかくなるから……。
「ナゴム、そろそろ風が冷たくなるから家に入らないと」
「ええ……そうね」
わたしが頷くと、ポコッと内側からお腹を蹴られた。
「あらあら、天使ちゃんはご不満みたいね」
そっとお腹を撫でると、ロゼッタさんも笑って肩を竦めた。
「それもそう。ナゴム、おてんばだったから。赤ん坊もやんちゃ違いないよ」
「……そう……わたし、そんなに活発な人間だったんだ」
「そう! ナゴムはいつも明るくて、ぐいぐいみんなを引っ張ってたよ」
落ち込みかけたわたしを気遣ってか、ロゼッタさんは肩を軽く叩いて励ましてくれた。
「いつかまた思い出せる。だから、くよくよするより。もっと楽しいこと考える。もうすぐ生まれる赤ん坊に良くないよ」
「……うん、そうだね」
赤ちゃんはあと半月で生まれそうと言われてる。それまでは安らかに過ごさないと……と自分に言い聞かせた。
けれど、不安になる。
わたしは、本当にここにいていいのかと。
記憶も何も失ったわたしはここに相応しいのか……と。