異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
(怖い……わたしはちゃんと育てられるの? 間違わずに大人まで……何一つ憶えていないのに)
自分がどこの誰かすらわからないのに。こんな根なし草のような人間が……一人の人間を責任を持って育てるなんて。
「……そんなの……そんなの無理だよ」
その重圧感にガタガタと身体中が震える。自分を護るように両手で抱きしめて、テーブルに顔を伏せた。
(怖い……怖い。怖いよ……誰か助けて……誰かわたしを……)
暖かい滴が頬を伝いテーブルに落ちる。ぽたぽたと落ちた涙は、手の甲を濡らして――もう一つ。手首にあるものにも吸い込まれた。
「……これ……一体何だろう?」
左手首に填められた緑色の綺麗な腕輪。半透明の……おそらく相当上質な宝石で出来ていると思う。繊細な透かし彫りがなされ、赤い宝石が填まってた。
(わたしの身分がわかるのかな? だけど……誰も教えてくれない。自分で思い出すべきということ?)
身体を起こすと、シャラリと軽い音が立って似たような緑色のペンダントが胸で鳴った。これも、気がついた時から身につけていたもの。腕輪は外すことが出来ないけれど、この勾玉というペンダントは自由に付け外しができる。
でも、必ず身に付けるようにとロゼッタさんに言われているから、常に首から提げてた。