異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「うわぁ、いい天気!」
翌日は絶好のお散歩日和。
澄みきった空には雲ひとつなくて、さらさらと気持ちいい風が頬を撫でて木の葉を揺らす。
「わたしは後からついていくから先に出発して」
何かトラブルでもあったのか、ロゼッタさんがそう言うから。わたしを乗せたレヤーは頷いた。
「わかりました。和さんはきちんとお守りしますから大丈夫ですよ」
「ああ、信用してるよ」
ロゼッタさんはポンポンとレヤーの肩を叩いて家へ戻った。
「じゃあ、飛びますからしっかり掴まっていてくださいね」
「うん、いいよ」
わたしの返事を聞いたレヤーは疾走を始め、徐々にスピードを上げながら翼を広げる。数度翼を羽ばたかせ、足元に地面が無くなった瞬間――フワリと浮いた。
一瞬、落ちるような浮遊感に身体が強張るけど。それは風に乗ると同時にかき消えた。
「――うわぁ! 素敵」
思わず叫んでしまうほどの雄大な景色が目の前に広がってた。
渓谷に沿って流れる川はキラキラと輝き、周りには緑が繁茂して雄大な景観の中に時折動物達が群れを成して走る。極彩色の鳥が飛び立ち、深い谷の下に暗い闇。雪を戴く白い峰が遠くに青くけぶる。
こんな素晴らしい景色を見ては、鬱々した気分なんてすっかり晴れるしかない。
「すごい……こんなに綺麗な景色があるなんて」
「この辺りはセイレスティアに近い温湿な気候ですからね。帝国の中ではかなり恵まれてます。この半年間で緑化も進みましたし」
レヤーが教えてくれたことに、わたしは素直に頷いた。
「よかった……半年前はもっと荒れていたものね」