異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



半年前――


何もかも失ったわたしを励ますために、レヤーは同じように背中に乗せて飛んでくれた。


その頃はまだこれだけ緑豊かな土地ではなくて。ところどころ赤茶けた土が剥き出しの、枯れかけた場所も多かった。


わたしは憶えて居ないのだけど、帝都にいらっしゃる皇后様が研究なさってる乾燥に強い植物を植樹して。隣の国の王太子妃殿下の調合した薬剤で育てた結果。たった半年でここまで豊かな土地に変化したんだ。


不思議なことに、わたしが来てから定期的に雨が降るらしく。ほとんど涸れ川となっていた近くの川も、今は豊かな水量を湛えてる。

レヤーの言う通りにこの土地はもともとセイレスティアに近くて温潤な気候ではあったけど、なぜか数年前からほとんど降雨が無かったそう。けど今はこうして甦ったことで、ディアン帝国の国土緑化計画が一歩前進したらしい。


何も無くて落ち込み引っ込み気味だったわたしだけど。こうして目標がある仕事を与えてくれて感謝してる。


特に、半年前に立った新しい皇后様が何かとわたしを気にかけていて。いろいろと贈り物や手紙を届けて下さる。


なぜ、皇后陛下という女性ではこの国で最高の地位にあるお方がわたしを……と思うけれど。寄る辺がないわたしをそうして気にしてくれる方がいる。それだけでずいぶんと励まされてた。


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