異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あの……あなたは。それに巫女って……」
《心配するな。妾のすべてをそなたに託す……もう、怖いことなどない》
微笑む彼女に戸惑いながら見上げると、レヤーが叫んだ。
「翡翠さん……まさかあなたはすべてを和さんに」
翡翠と呼ばれた謎の美女は、どうやらレヤーだけでなくわたしを知っているらしい。どうやってここに現れたかわからないけど、半透明な姿で身体が浮いてる。そして、なんとなく感じた。この人はこの世の“人間”ではないのだと。
そして、なぜかレヤーは目を見開き焦っている風に見えた。
「翡翠さん! それではあなたが消滅してしまいますよ。それでいいのですか!?」
《構わぬ。ようやく妾は解放されたのじゃ。だから……和どのを真の意味で解放する。それが妾の最後の務めじゃ》
フッ、と頭に温かさを感じた。
翡翠さんがわたしの頭を撫でたのだ、と理解したと同時に彼女はフワリとより高く飛んだ。
《和どの……今まですまなかった。これからは幸せに生きよ……》
「翡翠……さん?」
翡翠さんの体が緑色に輝くと、ゆっくりと徐々に姿が薄れてゆく。同時に翡翠の勾玉が熱を持ち――まばゆく輝くと同時にパンッと砕け散る。
そして。
翡翠さんの姿が完全にかき消えた――。