異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バサッ、とマントが翻(ひるがえ)る音が耳に届く。男が立ち上がった、と気づいて、心臓がより大きく音を立てた。
緊張で震えながら、汗がぽたりと顔から落ちる。
「……表に出ろ」
ポツリ、と言い置いてから、男は店を出ていった。
は~ッ……と緊張が解けて、その場でへなへなと座り込む。すぐにロゼッタさんが「ダイジョブ?」と助け起こしてくれた。
「あ、ありがとう」
「……もう一度言っておくが、やめておけ。生半可な気持ちで命懸けの選択をするな。おそらく、兄上はあなたを試すつもりだろう。連れていく実力があるか見極めるはず……容赦ない攻撃を加えてくる。それでも?」
「乙女に、二言はありません!」
あたしはライベルトさんとキキさんに、ニヤリと笑ってみせた。本当は無理にだけど。
「あの男を動かしただけですごくない? あいつはきっと、本気でくる。だから、あたしも本気でぶつかる。
あたしが本物の巫女だろうが、そうでなかろうが。自分の真実を見つけるために必要なことだから、全力で応える。それだけのことだよ」
きっと、怪我はするだろう。本当に命の危険もあるかもしれない。
けれど、あたしは人に言われて唯々諾々と従って流されたと後悔するより、どんなにひどい目にあっても自分の意思で選び後悔したい。それがきっと、自分で生きることだから。
自分で選んだことなら、きっと強くなれると信じて。