異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「……ぅあっ!」


ゴギ、と嫌な音がした。骨にヒビが入った……? 熱い痛みと鋭い痛みが交互に襲い来るけど、泣くもんかと歯を食い縛った。泣いたら視界が効かなくなる。


二度の攻撃を受けたなら、とあたしは男の動きを掴むために必死だった。痛みをこらえながら、手にした木刀で男の動きを追う。横凪ぎに振った一発は交わされ、次は腕に衝撃が走った。


けど、どんな痛みでも木刀を放すつもりはなかった。


(放さない……放すもんか! あたしは……自分で決めて、自分で生きていくんだから)


今まで、どれだけ流されてきただろう。


父が死に、おじさんがいなくなり、母が死に、引き取ってくれたおばさんが死んで。義理の家族の言いなりに生きてきた。


何があっても仕方ない、と諦めて――大して抗いもせずに。自分は可哀想だと友達に愚痴るだけで。変える努力をしなかったんだから。


そして、今だって。


水無瀬の巫女と呼ばれたって、何の力もない。嫌だ違うと叫んだところで、何も変わらない。だったら、違う方法を自分で見つければいい。


真実を、見つける。秋人おじさんがこの世界にいるかもしれないという可能性。日本人がいるかもしれない可能性。


あたしが喚ばれた意味も、何もかもを確かめるために。


< 91 / 877 >

この作品をシェア

pagetop