異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
――なごむ、なごむ。
(う~~……なによ、眠いんだから、寝かせてってば)
――別に寝てても構わぬが、このままだとそなたはあの世とやらに逝くが。それでも良いのか?
(あの世……はっ!?)
「ちょ……っ! なに言ってんのよ! あたしはまだ死にたくない」
――なら、素直に起きることじゃ。
その、鈴をふるような。澄んだ美声は初めて聞くもの。
「ね、ねえ。あなたは誰? どうしてあたしに起きろって教えてくれるの?」
――ふむ。やはりそなたは何も憶えてはおらぬか。仕方ないのう、わらわが少しだけ教えてやろうぞ。感謝するがよい。
ムカッ。何だかすご~く傲岸不遜な物言い。どこかで聞き覚えがあるような?
――それはそうじゃ。わらわはそなたに何度か言の葉を送っておる。それはともかく、そなたは今、水無瀬の縁(えにし)により大和とは異なる世界に来ておる。それは、秋人により結ばれし奇縁。そなたはいずれ、何らかの形で秋人と会うことになるじゃろう。