異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



《あの男、大和の血を引いておるな》


「うわっ!?」


あたしがびっくりしてベッドから落ちると、その美女はしゃがんでこちらを覗きこんでくる。


《どうした、ナゴム。そなたは褥(しとね)からじゃんぷするのが好きなのか?》


「あたたた……あの、ですね……ベッドから床に頭からダイビングするのが好きな人なんていませんよ。って言いますか、あなた誰です?」

《わらわがわからぬと? 薄情なやつじゃ。せっかくこうして姿を現してやったと言うに》


ブスッと頬を膨らませたその人は、とても美しい。藍色の艶やかな髪を結い上げ、黄金の髪飾りで飾って。ワンピースのような紅色の服を金糸の帯で締めてる。たとえるなら、聖徳太子の時代――日本だと飛鳥・奈良時代の高位の女性の正装って感じ。


顔はほっそりしてて、白い肌に紅色の唇と蒼い瞳が映える。華奢で子どものような外見だけど、豊かな膨らみが立派な女性と示してた。


その尊大な物言いに、聞き覚えはある。夢の中ではっきりと聞いた、鈴をふるような声にそっくりだ。というか、十中八九当人だろうけど……。


「憶えてますよ。けど……なんで、透けてる上に浮いてるんですか、あなたは」


あたしが手を伸ばせば、スカッとその人を通り抜けて向こうに貫通する。手応えが一切ない。


《仕方なかろう。今のわらわは実体ではなく、幻(まぼろし)のようなものじゃ。この姿を現すが精一杯なのでな、触れるは難しい》


美女はそうおっしゃいますが、そういえばそもそもあなたは何者でしょうか?


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