さよならさえ、嘘だというのなら
家に戻ると妹が食卓テーブルで勉強しながらプルミルを飲んでいた。
中学校も午前授業か
「おかえりお兄ちゃん」
いつも生意気な妹が、最近の俺を心配して元気に明るく迎える。
「ただいま」
カバンをソファに下ろし
妹の頭をくしゃっと撫でて冷蔵庫の扉を開くと
【颯大へ!】
ピンク色したメモに俺の名前が大きく書かれ、輪ゴムで二つ重なったプルミルにピッタリ貼り付けられている。
この字は……。
「七瀬ちゃんがさっき来て、『学校からプルミル出たから渡しておいて』って言ってた」
「二本も?」
「うん」
あいつ
自分の分も俺に回したな。
昔からそうだった
俺の元気がない時は、自分の分のおやつを持って来て俺に渡してたっけ。
久し振りに笑顔が出て
妹がホッとしたように俺を見て自分も微笑む。
「二本飲んでね」
妹に言われて
「おお」って返事し、そのままストロー突き刺して二本を一気飲み。
喉が渇いていたから美味しい。
「お母さんの愛情が入ってるから美味しいんだよね」
妹が言うので
「鈴木さんのおばさんの愛情も松本さんのおばさんの愛情も、山下さんのおばさんの愛情も入ってるわ!てかうちの母さん検品担当だし」
そんな会話をしてふたりでバカ笑いする。
須田海斗は
血の繋がった妹と
こんな会話をして
笑った事はあるのだろうか。