さよならさえ、嘘だというのなら
「大丈夫か?」
妙に落ち着いてる自分がいる。
七瀬の顔を見たら
一緒にパニくってられない。
デニムのショートパンツから伸びた白い足をW字に曲げ、淡いピンクのパーカーを着て、すがるように俺を見つめる。
俺は七瀬に「ハンカチ」って言い
差し出されたハンカチを奪い
須田海斗の首筋に当てる。
死んでる?
たぶん死んでる。
ハンカチが須田海斗の血を吸い取り
真っ赤に染まる。
瞳孔を開き
苦しそうな顔をして
驚愕の表情で横たわる
須田海斗。
どうしよう。
いや
もしかしたら
生きているかもしれない
間に合わないかもしれないけれど、俺はしつこく鳴らす母さんからの着信音を無視し、イケメン医師に助けを求めた。
「智和おじさん。すぐ来て、人が死んでるかもしれない」
信じられる大人のひとりである
智和おじさんに電話が繋がり
少し気持ちを落ち着かせ
七瀬の隣に座ると
「お兄ちゃん」
白いワンピースを着た凪子が
いつの間にか
後ろに立っていた。