さよならさえ、嘘だというのなら
「ウサギ殺しも松本結衣を傷付けたのも、君のお兄さんなんだろ」
おじさんに聞かれ
凪子は「はい」と返事をする。
「君のお兄さんはすごいねー。調べさせてもらったけど異常だな」
「どこでそれを?」
凪子は驚いておじさんに聞く。
「それは秘密」
智和おじさんは言い
目線を山へ動かす。
「おじさんはわかってたの?須田海斗が怪しいって」
「普通わかるだろ。ずーっと平和な町だったのに、この二人が引っ越してからの話だもの」
「でもドロン山が有名になってから、変な観光客もいて」
「君のお兄さんは血の匂いがまとわりついてた」
智和おじさんは俺を無視して
凪子にそう言う。
「血の匂い?」
繰り返し聞くと
「カンスケさんが教えてくれた。君のお兄さんが目の前を通った時に感じたそうだよ。身体中にまとわりつく血の匂いを」
そう言って凪子を見つめる。
「さぁ今度はそっちの番だよ。話を聞かせてもらおうか」
おじさんが言い
凪子は自分の話を語り出す。
夏なのに
夜風は冷たく
秋の足音を感じた。