さよならさえ、嘘だというのなら
その後
「ごめんね、すぐ着替えるから」
ナース姿の凪子は俺の姿を見て、逃げるようにバタバタと慌てながら奥に走って行った。
名残惜しい。
もう少し
その姿を見たかったかも
そんな俺の気持ちを見透かすように
「うわーっつ。颯大君の目がいやらしい」
それこそいやらしい声が背中から聞こえてきた。
まったく。
いい大人が何を言うか!
振り返ると白衣姿の智和おじさんがニヤニヤ笑ってる。
「うらやましいんでしょ」
大きな声で俺が言うと
「あーそーだよ。うらやましいわ!うちの可愛い看護師をひとり占めか?」
「悪い?てか残業させないでほしいんだけど」
俺はダッシュでここまで来たのに、凪子が残業なら意味ないじゃん。
「悪かったねー」
開き直って智和おじさんは俺にそう言った。
言葉と態度が一致してませんよ先生。
そこへ
「ごめんね。颯大君」
凪子が俺の前に現れた。
さっきのナース姿も可愛いけど
私服姿も可愛い。
ショートボブの髪がとても綺麗で、窓から射しこむ夕日を浴びてキラキラしている。
凪子の髪はあの夏もキラキラしてたっけ。