さよならさえ、嘘だというのなら
外に出て車に乗せようとすると
「あれ?自転車じゃないの?」って聞かれて
「はぁ?」って驚く俺。
「公園に行くのなら自転車でしょう」
俺をからかう凪子は、もうすっかりこの町の住人。
「もうチャリで全力疾走できません」
凪子と初めて言葉を交わし、自転車ふたり乗りした日。
俺はちょっと頑張りすぎて
町の中をあちこち全力疾走し、次の日足がパンパンだった。
ミエはったんだよなー。
可愛かったなぁ俺。
「智和先生の自転車あるよ」
凪子はおじさんのチャリを指さす。
いや
それは俺のお下がりなんですけど
おじさんが使うったからあげたんですけど。
凪子は笑って動かない。
「知らんぞ!」
俺はスーツの上着を脱いでネクタイを緩めた。
そして
カバンと一緒に上着を車に入れ
おじさんのチャリに乗ると
凪子は驚いて目を丸くする。
「乗れよ」
「うん」
6年ぶりの自転車ふたり乗り
そして
公園へ向かう。