さよならさえ、嘘だというのなら
七瀬の事で疲れて家に帰っても
母さんと妹に捕まり
夕食の場では転校生の話ばかりさせられた。
「お金持ちのお坊ちゃまとお嬢様なんだって、お手伝いさんを二人連れて例のお屋敷に住むらしいよ」
町役場に勤める父さんより、飲料工場で働く母さんの方が詳しいのはナゼだろう。
おばさん達の情報網ってスゴっ。
「スゴい美形双子って聞いたよ。ねぇお兄ちゃん、今度紹介してよ」
「双子って似てるの?」
「やっぱ転校生はイケメンだったね」
盛り上がる西久保家女子軍団。
元気だなぁ。
退屈な田舎町だから仕方ないか。
あのお化け屋敷にお手伝いさん付で住むのか。
思わず引っ越しの最中
七瀬とこっそり見上げ
急に視線を感じて薄気味悪くなったのを思い出した。
「うわっ。ヤダヤダ」
身震いして家庭菜園で育てたキュウリの酢の物を口にする。
「そんな連れて来るの嫌なの?性格悪そうなの?」
妹が心配そうに聞く
「いや。顔はいいし背も高いし、性格も良さそうで都会的なヤツだけど、おだやかで普通に話しやすい感じ」
そう言うとまた女子群が盛り上がる。
母さん。
何でそんなに元気なの。
「妹は似てる?」
「妹は……似てるっちゃー似てる。綺麗な顔だけど髪は兄貴の方が茶色くて、妹は黒かった」
「お兄ちゃんって変なとこ見てんだね」
「そうかな」
兄貴の方が目も髪も茶色かかってるのに、妹の髪は黒かった。
サラサラした
窓からの日差しに反射して
とても綺麗な髪が印象的だった。
凪子の目の色はどうだっけ
近くから見れなかった気がする。
倒れてからは目を閉じていたからわからない。
海斗のように
やっぱり茶色なのだろうか