さよならさえ、嘘だというのなら
「他の町にも卸してるよ。ネット販売もしてるし。町のイチオシだけど知名度は低い」
「美味しいのに」
「ゆるキャラもあるし」
「本当?」
「身体がこの紙パックで、顔がミニトマト。ぜんぜん可愛くないキャラで、町のイベントに出ると子供がケリ入れる」
「かわいそう」
凪子は楽しそうに笑う。
学校でもその顔を見せたらいいのに……って思う反面、この笑顔を独り占めしたい……両極端な自分の気持ち。
「この町は、変な噂で知名度が全国区だからさ」
「……そうだね」
やっぱり知ってるのか。
「イメージ最悪だろ」
俺は工場の煙突からずーっと目線をずらし
右手を上げて
小さな山を指さした。
「ドロン山」
俺が説明する前に
凪子がポツリと声にする。
悪名高きドロン山。
プルミルは知らなくても
全国的に有名なのは
こっちの方だろう。